2007年4月27日(金)〜5月8日(火)、長野県松本市でmorgenrotの個展が開催されます。 版画の販売も行いますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄り下さい。 <5月末日 追記> おかげさまで、個展は無事に終了しました。 |
西鎌尾根は強風が吹き荒れていた。 稜線を西に東にまたぐたびに風向きも変わり、強さも違ってくる。 目の前に大きく立ちはだかる槍ヶ岳は、残雪の筋模様を付けて青く霞んだままで、いっこうに近付いてこない。 三俣から双六までは、あたかもお花畑の散歩だった。 そんなのどかな山歩きが樅沢の登りから一変し、飛騨側からの強風にさらされて、うっかりすると千丈沢に飛ばされそうになる。 狭い稜線の岩の間には、這いつくばるようにしてシコタンソウが咲いている。 精いっぱい伸ばした5枚の花弁に散らばる赤い斑点が、雪と風の中でたくましく育つ東北の子供達の頬のようで、いかにも愛らしい。 |
色丹島で発見され、明治に入って特定、命名されたとか。その後100年に渡って亜種だ変種だの論議が続いている。 そんな面倒臭いことは先生方に任せ、強風に頑張る可憐な花にまずは乾杯。 |
5月中旬、まだ暗いうちに尾瀬を目指す。 鳩待峠を出るころ、東の空が明るくなってきた。 川上川に沿って下る木道の両側にはまだ残雪が深く、ミズバショウの苞は固く口を結んだままだ。 暗い木立の間をいくつか過ぎる。と、まさに「パッと」という形容そのままに、尾瀬ケ原が目の前に広がった。 夜明け前の草原は朝もやの中に沈み、白い木道だけが、どこまでも伸びていく。 尾瀬ケ原が一番静かで美しいひとときだ。 湿原のそこここにはミズバショウが開き、リュウキンカが黄色いアクセントを添えている。 やがて朝日が昇り、湿原がその光の中に浮かんでくると、静かな尾瀬ケ原にまた喧騒に満ちた一日が始まる。 |