2007年4月27日(金)〜5月8日(火)、長野県松本市でmorgenrotの個展が開催されます。 版画の販売も行いますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄り下さい。 <5月末日 追記> おかげさまで、個展は無事に終了しました。 |
北アルプス。表銀座を歩いていても、裏銀座を通っても、北のはずれにデンと腰をすえて、視界から離れないのが針ノ木岳である。 隣の蓮華岳がおっとりと寝そべっているだけに、その両肩を張った姿がことさら目立つ。 だが山としては不遇でもある。 山名が付いたのは大正に入ってからだ(針葉樹が針に見えるからだとか、「榛(はり)の木」が転じたとかいわれている)。 後立山の登山開発に尽力した百瀬慎太郎氏が、針ノ木小屋・大沢小屋を建て、毎年6月には「慎太郎祭り」が行われているし、大雪渓も長大で高山植物も多いのだけれど、いま登山客は、白馬岳に行ってしまう。 むしろ「山」より「峠」の方が有名かもしれない。 1584年の12月、富山城主の佐々成政が立山のザラ峠から黒部川を渡り、この峠を越えて浜松の徳川家康のもとに駆けつけた「針ノ木峠越え」は、雪中行軍の先駆として語り継がれている。 |
その400年後、針ノ木岳の北裾にトンネルが貫通し、立山黒部アルペンルートがツアー客で賑わうようになった。山も峠も素通りだ。 足元に穴を開けられたこの山は、それでもデンと、腰を据えている。 |
それは7月末の奥穂高岳の頂上直下だった。 強くなった雨脚を避けるため、大きな岩の下にもぐりこんだ。 ふと上を見ると、数輪のトウヤクリンドウがレモンイエローの花弁を閉じたまま、雨空を見上げている。 雨とガスの中でぼやけていたが、その淡い色の中に幾筋かのアクセントをつけた花は、いかにも可憐だった。 リンドウというのはだいたいが紫か青が相場である。 だから白や黄色のリンドウに出会うのは珍しい。 そして高山のリンドウの開花時期はほとんどが8月いっぱいだ。しかし夏は登山のハイシーズンでもあり、そんな時には、人気のある山にはなるべく登らないようにしている。 そのようなわけで、山でリンドウに巡り会うこと自体が少なく、トウヤクリンドウは、花に興味を持ち始めてから今回が最初の出会いとなった。 |
この花は富士山にはないし、北岳の頂上付近にも見当たらない。 だから奥穂で見たこれが、もしかしたら日本で一番高い所に咲くトウヤクリンドウかもしれない・・・と思っている。 |