morgenrotの山と花の創作版画

第19回
(2005/07/07更新)

個展案内表

2007年4月27日(金)〜5月8日(火)、長野県松本市でmorgenrotの個展が開催されます。

版画の販売も行いますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄り下さい。

<5月末日 追記>

おかげさまで、個展は無事に終了しました。
どうもありがとうございました!。




自分で撮った写真をもとに下絵をおこし、彫りから刷りまで一人でやる、創作版画です(実物はハガキ大)

(c)2009 morgenrot 全ての版画・テキストの無断複製・転載は固くお断りしています

タカネマンテマ(2002年2月制作)
タカネマンテマ

梅雨明け早々に南アルプスを歩く。
入山者はまだ少ない。
北岳から大樺沢の雪渓を二俣の下まで降りると、六十年輩の男性が三脚を立て、しきりに草の間を狙っている。
見ると、花が終わり、青い実をつけたサンカヨウにピントを合わせているのだった。

シャッターを切るのを待ってから「二俣まで上がるとまだ花が残ってますよ」と言うと、「ヒエッ」と言って、彼は嬉しそうな顔をした。
「頂上にはタカネマンテマも咲いています」。
彼はもう一度「ヒエッ」と言うと、顔をくしゃくしゃにしてそそくさと撮影器具をしまいだした。

タカネマンテマはかわいく、愛嬌のある花である。
何よりも萼(がく)の筒の部分が、風船みたいに膨らんでいるのが面白い。
花はその先端に、すねた幼児が唇をとがらせたような格好でのぞいている。

そんな幼児が強風の吹き抜ける稜線で、他の草に混じって頑張っている姿はいじましい。
背が低いので、うっかりすると、何かの蕾として見過ごされてしまいがちだ。
だが、そのおかげで南アルプスだけのこの花が守られているのかもしれない。同じ仲間の「タカネビランジ」のように派手々々だと、たちまち盗掘の犠牲となりそうだ。

ところで、撮影器具を抱えた彼は頂上まで登ったのだろうか。




岩木山(2001年5月制作)
岩木山

わが国には各県各地に富士山がある。
姿が美しくその地方の象徴、自慢の山を「○○富士」と称しているのだ。中には公園に土盛りをして富士の名を冠しているものさえある。

しかし"津軽富士"、岩木山はひと味違う。
石坂洋次郎にしろ太宰治にしろ、岩木山を母のように慕い、それが津軽の人々の思い入れようを表している。
『岩木山は富士山以上だ。富士こそ"甲斐岩木"というべきだ』という風潮さえあると言っても、過言ではない。

この思い入れが、「わが村からの眺めが一番」となり、各村から登山道がのびるという結果につながっている(しかしさすがに太宰治は、「弘前から見るといかにも重くどっしりして・・・金木・・・あたりから眺めた岩木山の端正で華奢な姿・・・」と、平等に見ている)。

もともと「イワキ」はアイヌ語の「神聖なところ」であり、古くから深い信仰を受けてきた山なのである。それが旧暦8月1日の「お山参詣」となって続いている。

子供達がまだ小さい頃、家族全員で八合目まで車で乗りつけ、リフト利用で30分程度で頂上に立ってしまったことがあった。日本海の眺めが素晴らしかったのを覚えている。
けれど、一度はお山参詣の表玄関である岩木山神社の鳥居をくぐり、ミチノクコザクラを愛でながら山頂を目指さなくては・・・と思いながら、いまだ果たせずにいる。


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morgenrot=モルゲンロートとは・・・
山用語では特に、雪山が朝日をあびて朱色に染まることを、こういうようです。
登山が趣味なので、そこから
ペンネームをとりました。

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