morgenrotの山と花の創作版画

第20回
(2005/10/02更新)

個展案内表

2007年4月27日(金)〜5月8日(火)、長野県松本市でmorgenrotの個展が開催されます。

版画の販売も行いますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄り下さい。

<5月末日 追記>

おかげさまで、個展は無事に終了しました。
どうもありがとうございました!




自分で撮った写真をもとに下絵をおこし、彫りから刷りまで一人でやる、創作版画です(実物はハガキ大)

(c)2009 morgenrot 全ての版画・テキストの無断複製・転載は固くお断りしています

<新作> ベニバナイチヤクソウ(2005年9月制作)
ベニバナイチヤクソウ

梅雨明け10日の初日、高瀬ダムから裏銀座のルートを登る。

濁沢の吊り橋を渡るといよいよブナ立尾根の急登である。権現落シを過ぎていいかげん息が上がったころ、いきなり北側の展望が開け、南沢乗越の崩落あとがむき出しとなる。

足下はガレて谷に切れ落ちている。
転落防止のつもりか、崖っぷちには大きな朽ち木が転がしてあった。相当古い木らしく真ん中がひび割れて、そこに草が生い茂っている。
それがなんと、ベニバナイチヤクソウなのだ。

花崗岩の砂礫地に転がった枯れ木である。
水分も十分でなかろう。林床に生えるベニバナイチヤクソウと違って色は淡く、一茎に数輪しかついていない。
それが割れ目に沿って行儀よく一列に並び、南沢乗越の荒々しい岩肌と対峙していた。

「イチヤクソウ(一薬草)」はその名の通り薬草である。
乾燥して脚気の民間薬としたそうだ。なるほど、きつい登りに足の薬か・・・

同じ花なら乗鞍高原でも見たし、甲武信岳の登山口、川上村の毛木平には群生していた。
しかしどこのベニバナイチヤクソウよりも、ブナ立尾根の崖っぷち、枯れた大木に花開いたこのベニバナイチヤクソウが、薬効あらたかに思えた。




<新作> 権現岳(2005年7月制作)
権現岳

権現岳は八ヶ岳の中でも特異な存在である。
標高こそ主峰赤岳にはもちろん、横岳、阿弥陀岳、硫黄岳に劣るが、そんなことに我関せずの様相で立っている。

縦走していると、赤岳からひたすら下る。
450m下ってようようキレットの底に着くと、今度は250m登り返さなくてはいけない。
岩峰の権現頂上を越えると再び400m下り、200m登り返して縦走最後の編笠山である。

赤岳から見ても編笠山から見ても、深いキレットの向こうに衝立てのように立ちはだかっているのが、この山だ。里から見上げても、旭岳とギボシを従えて漢字の「山」よろしくそびえている。

だいたい山名からして、「赤」とか「横」とか、単純で視覚的でないのがいい。
仏教関係の山名で一番多いのがこの「権現」で、2万5千分の1図で82(別説では81)座もあるといわれている。
ちなみに2位が「観音」の54座、3位は「薬師」の45座だそうだ。

権現とは仏が仮の姿となって現れること。
拝みたくなるような山に「権現」と名付けるのも当然といえよう。
だが登った人々、里から仰いだ人々が『権現様』と呼ぶにふさわしい堂々とした山・・・それは八ヶ岳の権現岳ではないだろうか。


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morgenrot=モルゲンロートとは・・・
山用語では特に、雪山が朝日をあびて朱色に染まることを、こういうようです。
登山が趣味なので、そこから
ペンネームをとりました。

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